属人主義税制を取れば富裕層へ増税できる!
財政を健全化する為には、税収を増やす事が不可欠です。しかし、財務省が企む消費税増税は、富裕層も貧乏人も関係なく、子供からお年寄りまで等しく税金を掛けるという、最低最悪の税制です。このような暴挙が推進される理由の一つに、金持ちに高い税金を掛けられないという「偽り」の経済理論がまかり通っていることが挙げられます。曰く、高額所得者の課税を強めると、金持ちが税率の低い海外に逃げてしまうという理論です。
確かに企業と違い、個人は身軽に居住国を変える事が出来るので、累進課税を強める(高所得者に増税する)と、日本脱出を図る富裕層も増えるでしょう。これは半分当たっていますが、この事だけで「富裕層には増税できない」と結論付けることは、明らかに間違いです。何故なら、富裕層の国外脱出をとても簡単に防げる方法があるのに、その事が伏せられているからです。少なくとも、筆者はこの解決方法を一度も聞いた事がありません。その方法とは
個人への課税を"属人主義"に変更する
ことです。現在の日本では「属地主義税制」といい、居住国によって納税義務の生むが決まります。よって、日本国籍を持っていても、日本に住まず海外で暮らしていれば、日本に納税する必要はありません。この「属地主義」こそが、富裕層の税金逃れを許す原因なのです。
大橋巨泉やデューク更家のように、国籍は日本人のままで海外に住み、金を稼ぐ時だけ日本に「出稼ぎ」に来るというのが、税金逃れの典型例です。また日本の有名ミュージシャンでも、海外に拠点を置く人は少なくありませんが、彼らの主目的もやはり税金逃れです。彼らのように、日本の国籍を持っていても、所得税率の安い国(タックスヘイブンなど)に住む事で、莫大な収入に対する課税を最小限に抑えられるのです(Perpetual Travelerと呼ばれます)。
これを防ぐには、税金を居住国で判断する「属地主義」ではなく、居住国に関わらず全ての日本人に課税する「属人主義」に変えれば良いのです。こうすれば、富裕層が海外へ脱出しようが、日本国への納税義務は消えませんから、どれだけ所得税率を上げても何の問題も生じません。
「そんなことしてる国があるのか?」と疑問に思う人もいるでしょう。確かに、日本を含め多くの国が属地主義税制を取っていますが、アメリカとフィリピンが属人主義税制を取っています。
アメリカは属人主義なので、富裕層が逃げる事が無い
何と、世界最大の経済大国で、世界最多の富裕層を抱えるアメリカ合衆国では、属人主義税制が敷かれているのです。その為、富裕層がタックスヘイブン等へ逃げても、必ず米国本土で税金を支払わなければいけないのです(*1)。日本では、アメリカは究極の格差社会で、富裕層に有利な仕組みだと勝手に思われていますが、実は金持ちの税金逃れを一切許さず、税による所得再分配機能が充実した「平等な」国家なのです(*2)。
この事実、知っていましたか?おそらく知っている人は皆無なはずです。なぜなら、日本で情報を発信する側の人間(マスメディアや専門家)が、すべからく自身が富裕層なので、アメリカ税制の事実が知られる事は、彼らにとって不都合だからです。そして「富裕層に増税すれば国外へ逃げられる」と嘯き、「国の財政を立て直すには消費税増税しかない」という詐称を続けているのです。
最後に「富裕層の増税は有能な人間のやる気を削ぐ」という屁理屈も論破しておきましょう。累進課税がきつくなれば、確かに富裕層の納税額は増えますが、働き損になる訳ではありません。ソ連や中国など旧社会主義国では、働き具合に関わらず収入が一定で「働き損」が生じたので、誰も働かなくなった訳です。今言っている制度は、沢山働いて沢山稼げば、納税額は多くなるが、最終的な所得も普通の人より多くなるので、旧社会主義国とは全然違います。
そもそも1984年まで、日本の最高税率は88%だった訳ですが、経済は発展を続けていて、多くの富裕層が「より豊かな生活」を求めて更に努力をしていた訳です。屁理屈ジャーナリストの言うように、富裕層への増税で経済の活力が失われるなんて事は、万に一つもありえないのです。
日本の財政問題は、インフレターゲットで経済を好転させ、加えて属人主義税制による高所得者へ増税すれば、簡単に解決が可能です。元来、税金の最大の役割は「所得の再分配機能」です。不況時に庶民に消費税増税するなど言語道断!金持ちから召し上げることが、健全な社会というものです。この政策の正しさは、世界最大の経済大国であり、自己責任の国=アメリカ合衆国が、属人主義税制を行っている事から明らかなのですから。
*1:アメリカの属人主義税制は、国籍を捨てた後も10年間は納税義務が消えないという、極めて厳しい制度です。だから、ビルゲイツやウォーレンバフェットなどアメリカ人の大富豪は、タックスヘイブンへ逃げず、米国籍も捨てようとしないのです。
*2:アメリカは日本よりも平等な社会だという例は、他にもあります。例えば、GDPに占める政府の生活保護支出の割合は、日本が0.3%なのに対して、アメリカは3.7%です(ソースは「税金は金持ちから取れ(武田知弘:著)」より)。日本の割合は先進国中最低であり、しかも生活保護自体が「既得権益」と化しているので、世界最悪の格差社会だと言えるのです。 |