財政破綻で年金生活者の破産が増える
日本政府がデフォルト(財政破綻)を起こせば、全ての日本国民が、大なり小なり被害を被ります。建設業や銀行で倒産が相次ぐため、失業を余儀なくされる人も増えるでしょう。インフレで輸入物価が急騰するため、小売業などでも賃下げ・リストラが増えるはずです。
しかし、もっとも大きな被害を被るのは、働いていない人=すなわち年金生活をしている退職世代の人たちです。
退職世代の人は、基本的に年金収入によって生活が成り立っています。政府が財政破綻を起こせば、年率数十%(あるいはそれ以上)の高いインフレが起こることは間違いなく、退職世代の人達の生活に大きな悪影響が及びます。公的年金以外に蓄えが無い人なら、破産に陥る可能性すら考えられます。
この予測に対して「日本の年金制度はマクロ経済スライドが採用されているから、インフレが起きても大丈夫ではないのか?」という反論をする人も居ると思います。しかし、公的年金のマクロ経済スライドには、大きな問題点が含まれており、全く安心できないのです。マクロ経済スライドという制度は、年金支給額を物価上昇率に連動させると言うものですが『インフレ率から0.9〜1.4%を引いた率』とされています。つまり、常にインフレ率よりも年金上昇率は小さくなるのです。
当然、財政破綻で高いインフレが起きた場合、物価上昇率よりも年金の増額が少なくなることが確実です。それどころか、マクロ経済スライドの『0.9〜1.4%引く』というマイナス部分が、更に大きな数値へと改悪される可能性が高いのです。
なぜなら、日本政府の財政が貧窮している大きな原因は、社会保障費の増大であり、その社会保障費の中でも最も大きい割合なのが、公的年金の支給額です。財政を立て直すためには、公的年金の負担を減らすことが不可欠なのです。
退職世代の人はリスクヘッジが難しい〜正しい政治家を選ぶしかない
よって、年金のマクロ経済スライドが良い方向(インフレ率に負けない)に改訂されることは、考えられないのです。マクロ経済スライドが悪い方向へ変わる、もしくは条項すら無視し、年金の一律カットが行われるリスクすら考えられます。何せ財政破綻とは、政府が「デフォルト(債務不履行)」を宣言している訳ですから、年金制度だってルール無視で覆される可能性は、十分ありえる事なはずです。
皮肉なことに、現在の公的年金制度で圧倒的不利を被っている若い世代ほど、外貨建て資産を持つなど財政破綻に備えた資産運用を行いやすいです。給与所得が途絶えた退職世代の人が、外貨建て資産などリスクを背負った運用を行うと、金融危機に巻き込まれた時に(若い人と違い)回復するまで待っていられる時間が無いので、破産する恐れすら出てきます。
つまり、既に退職している世代の人や、現在50代以降の人などは、自力で財政破綻〜年金カットのリスクに備えることは、極めて難しいのです。これらの人達が取れる行動は、正しい方向で財政再建を行う政治家(*注)を選び、高インフレや年金カットなどが起こらない社会を築いていくしかありません。
*注:世間では、財政再建は消費税増税で行うべきだという理論がまかり通っていますが、これは100%間違いです。消費税を増税すれば、消費が落ち込み景気悪化〜税収が減るので、財政はむしろ悪化します。
正しい財政再建を行う政治家は、日本の諸悪の根源である財務省の解体と、インフレターゲットによる経済成長で税収を増やすことを掲げる人のことです。 |