財政破綻対策〜外貨建て資産を持つべき
財政破綻が起きると、急激なインフレが起こり、日本経済に大きなダメージが及びます。無論、このインフレは国民生活にも大きな負担を強いることになります。
我々国民が、急激なインフレリスクに対処する方法として思いつくのが、外貨資産への投資です。インフレは日本円での預貯金の実質的な価値を下げますが、外貨資産には影響を及ぼしません。インフレと共に急激な円安も起きるので、外貨を円に戻す際には、大きな為替差益が得られるからです。では、数ある外貨建て商品の中で、どれが有効なのでしょうか?
まず、誰もが最初に思いつくのは「外貨預金」だと思いますが、これは全くお勧めできません。外貨預金は、後術する外債ファンドやFXなどに比べて、極めてコスト(手数料)が高く、また途中換金も出来ないなど制約が多いからです。同様に、個別の外国債券も、隠れコストが高いのでお勧めできません。
では、個別の外債ではなく、外債ファンド(投資信託)はどうでしょうか?日本で最も売れている「グロソブ」を筆頭に、外国債券に投資するファンドは非常に人気が高いです。これら外債ファンドも、インフレ=円安が起きることで、大きな為替差益を得られます。そして、外国株などに比べれば、価格変動のリスクも小さいです。特に引退世代の人にとっては、毎月分配型の外債ファンドは、「インフレ率に連動して増加する年金」を得られる訳ですから、有効な手段と言えます。
但し一つ注意したいのは、外債ファンドは商品によって保有コスト(信託報酬)に大きな差があることです。前述した「グロソブ」は、信託報酬が約1.31%と割高です。同じ外債ファンドでも、インデックス型の投信なら、信託報酬が0.6%程度の物もあります。中身はほぼ同じですから、出来るだけ信託報酬の安いファンドに投資するのが、ベターな選択です。
外国株への投資も一つの方法ですが、これは人によってお勧め度が異なってきます。為替差益は得られても、株価の変動という別のリスクを抱えるからです。株式に分散投資すれば、長期的にはほぼ確実にプラスになりますので、若年層なら問題ないです。しかし、投資期間を長く取れない引退世代の人には、むしろデメリットの方が大きいでしょう。
FXの円売りは、破綻時には最もハイリスクとなる
最後にFX(外為証拠金取引)について。FXも外貨への投資ですから、日本がインフレ=円安になれば、為替差益を望めます。但し、大きな問題となるのが「スワップ金利」です。FXのスワップ金利は、二国間の政策金利の差分を、投資家が受け取り(or支払い)する制度です。
現在、日本はゼロ金利なので、円売り=外貨買いをしていれば、ほぼ全ての外貨でスワップ金利が受け取れる状態です。しかし、日本政府が財政破綻を起こせば、長期金利(国債利回り)の急上昇や、キャピタルフライト(資産の海外逃避)が起きるので、その対策として政策金利も大きく上昇せざるを得なくなります。すると、円売り=外貨買いをしている人は、スワップ金利を支払わなければいけない状況に陥ります。しかも、財政破綻を伴うとなれば、生半可なスワップ金利では済まず、10%を越える可能性も高いです。
故に、FXで円売りを行っていれば、為替差益は得られるものの、破綻時には莫大なスワップ金利で利益の大半が吹き飛ぶので、有効な戦略とは言えません。日本政府が破綻するまでは、FXでの円売り=外貨買いもありだとは思いますが、あくまで「デフォルトする前まで」の期間限定の運用で、ハイリスクな事を知っておくべきでしょう。
なお、国内の金融機関を使わず、海外の金融機関へ直接資産を預ける事を推奨する書籍やサイトもあります。しかし、利用には極めて高い英語力が必要ですし、トラブルが起きるリスクもあり、一般の人にはお勧めできる方法ではありません。
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