消費税増税1%で2兆円の増収・・・は嘘!
消費税導入の議論では、安定財源として必要だという理論がまかり通っています。その根拠として「消費税1パーセントで約2兆円の税収が増える」という統計があり、税率を10%まで上げれば10兆円の財源が確実に確保できる〜これで財政再建をしよう!というのが増税派の理屈です。
しかしこの理論には明確な誤りがあります。1パーセントの増税で2兆円を確保できるというのは、あくまで過去の税収データから導き出した数値であり、今後は1%で2兆円を確保することは難しいのです。
理由は二つ。一つ目は、日本は今後少子高齢化と人口減少が加速するため、内需が年々減少していくからです。結婚や子育てなど多くの人生のイベントを送る若者の数が激減し、子育てを終えて年金で余生を送る高齢者が増えるのですから、内需が拡大することなど基本的にあり得ないのです(*1)。人口統計というのは、経済統計の中でも最も信頼性が高い予測と言われていますから、日本の内需減少はほぼ確定的なのです。内需=国内の経済規模が縮小すれば、当然ながら消費税1%当たりで得られる税収も少なくなります。
もう一つの理由は、軽減税率です。消費税率が高くなれば、食料品など生活必需品への軽減税率が導入されるはずです。軽減税率の品目ができれば、当然ながらその分税収は減少します。この2点の理由から、仮に消費税を5%⇒10%にしても、税収は10兆円も増えない可能性が極めて高いのです。
そうすると、さらに悪い事が起きます。消費税を10%に上げたとしても税収が想定ほど増えなければ、そのことを言い訳にさらに税率が上げられる危険性すら出てくるのです。軽減税率は、一見すると庶民の日常生活を助けるように見えますが「1%=2兆円」の税収目論見を崩す要因の1つになるので、さらなる税率アップを引き起こすという皮肉な結果になりかねないのです。
法人税収入なら内需が縮小しても増やせる
このような日本の将来を考えると、実は法人税の方が税収として有望なのです。消費税収入は人口減少・少子高齢化で減少していくのは確実ですが、法人税はそうではありません。内需は縮小しても輸出を伸ばせば、企業が利益を増大させることが可能ですから、法人税収はまだまだ伸ばせる余地は十分にあるのです。
日本の法人税率は高いので減税しろ!という理論もよく見かけます。確かに税率が高いことは間違いではありませんが、だからといって法人税の減税を認める理由にはなりません。なぜなら、アメリカも日本と同じ39%の法人税率なのに、グローバル市場で勝ち組になっている企業の多くがアメリカ企業だからです。日本企業が世界で伸び悩んでいるのは、法人税率のせいではなく、単にマーケティング戦略が下手すぎて、品質の良さを全く生かせてないだけなのです。
主要先進国の法人税率(2008年度時点) |
国名 |
日本 |
アメリカ |
カナダ |
ドイツ |
フランス |
法人所得税 |
27.98% |
32.7% |
19.5% |
15.825% |
34.43% |
法人住民税等 |
11.56% |
6.55% |
14% |
14.35% |
- |
合計税率 |
39.54% |
39.25% |
33.5% |
30.18% |
34.43% |
実は経団連が消費税に賛成する理由は、法人税の減税が目的だからなのです。一旦消費税の税率アップを認めてしまえば、その後もずるずると財務官僚や経団連の言いなりで、無秩序に税率アップが繰り返されることは間違いありません。何とか現時点で、財務省の増税プロパガンダを叩き潰し、増税論を根絶やしにしてしまわないと、放漫財政のツケを全て庶民が背負う羽目になってしまいます!
*1:物価上昇を除く実質内需(≒実質GDP)という意味。インフレを加味した内需(≒名目GDP)の拡大は十分可能で、その意味でも税率アップではなくインフレターゲット政策が必要となります。
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