円高是正の方法は為替介入だけではない!
日本経済の低迷の理由として、金融危機後の急激な円高があります。何とか円安に誘導したい所ですが、日本では為替を円安にする方法として、政府が「為替介入」をすることしか無いと思いこまれています。しかもこの裏には、消費税増税を目論む財務省の陰謀が隠されています。
まず最初に、為替介入以外にも、円安誘導方法があります。それも実に単純で、日銀がカネを刷ることです。具体的には、日銀が紙幣を増発し、その増発したカネで国債を購入する「買いオペ」を増やすことで、マネーの流通量を増やすことです。日銀は日本で唯一、紙幣を自由に発行出来る権利を持った銀行なので、理論上はいくらでもカネを刷ることが可能です。そのため、為替介入よりもはるかに高い円安誘導効果を持っています。
2007年のサブプライム危機以降、急激に円高が進んだことには、理由は二つあります。一つ目は、円キャリートレードの解消で、マスコミはこちらしか触れていません。そしてもう一つの理由は、アメリカの中央銀行であるFRBが、ドル紙幣を刷りまくる「金融緩和」を行った(そのカネで米国債を購入した)ことです。特に2008年末の金融危機以降は、FRBは市中の国債を買い上げる買いオペだけでなく、米政府から直接購入をすることまで行う、超強力な金融緩和を行っています。
一方で日銀は、金融危機以降もほとんどマネーの供給を増やしていません。右のグラフは、2004年を起点とした通貨量(マネーストック)の伸びです*1。主要国では全て、マネーストックが増えていますが、日本だけほとんど増えていないことが明らかです。
そして為替レートも、需要と供給の関係が成り立ちます。一方の国のマネーの供給量が増え、もう一方の国で増えなければ、増えた国の通貨価値は相対的に下落するので、ドル安=円高となる訳です*2。無論、ユーロや韓国ウォンに対する円高も、同様の理由です。
つまり、現在の度が過ぎた円高は、諸外国に比べて日銀の金融緩和が不十分(マネーの供給量を増やしていない)なことが原因です。当サイトでも書いているように、日銀は90年代後半より、事実上の「デフレターゲット」を行っています。日銀は自分達の利益と権力保持ために、絶対にインフレを起こさないよう、マネーの供給量を増やしていません。
為替介入に隠された、財務省の消費税増税の陰謀
そしてデフレが続くことは、本来は日銀といがみ合っている財務省にとっても、非常に好都合なのです。財務省の悲願である「消費税増税」を行うためには、景気が低迷して税収が増えないことが望ましいからです。デフレと不景気で所得税や法人税が減少すれば、税収確保という大義名分の元で、堂々と消費税増税を打ち出し(軽減税率をちらつかせて)天下り先を無尽蔵に増やせるからです。
ですから財務省も日銀も、簡単に円安誘導が行える政策(カネを刷る)があることを、ひた隠しにします。為替介入では、現在の円高を是正できないことは、彼らは百も承知です。一応形だけ為替介入を行い
◆日銀:ほら、私たちは頑張って介入してるでしょ?でも円高は是正できないんですよ
◆財務省:じゃあ仕方ないね。円高不況が続いて法人税は増えないから、消費税上げましょう
という茶番劇に誘導しているのです。マスコミは馬鹿なので、このような日銀と財務省の裏工作を見抜けていません。そして大スポンサーである経団連の意向に添って、消費税増税キャンペーンを行っています。経団連は法人税減税を目録んでおり、その代償としての消費税増税は大歓迎しています。
このような為政者達の悪だくみに騙されてはいけません!円高はカネを刷ること「だけ」で解決できます。現に、近年経済が好調な韓国やブラジルなどは、為替介入ではなく「カネを刷る」ことで、自国通貨高を抑制し、輸出で大きな利益を上げています。為替介入は他国からの非難を浴びますが、中央銀行がカネを刷ることによる通貨安は、あまり非難されません。なぜなら、世界中の中央銀行が(FRBもECB(欧州中央銀行)も)、カネを刷りまくっていますから。
円安になれば輸出が伸びますし、雇用も増えるので、経済が好転します。経済成長とマイルドなインフレを合わせれば(具体的には名目GDP4%成長)、増税などしなくとも、財政再建は可能なのです。
*1 参考文献:金融経済統計月報(東京官書普及)
*2 対象国の通貨供給量の増減により、為替レートが変動することを「相対的購買力平価説」といいます
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