名目GDPが成長すれば、財政破綻など起きない!
日本の借金を語る際、必ず出てくるのが「政府債務の対GDP比」というものです。2010年時点で、日本のGDPは年間およそ500兆円、それに対して日本の借金(国と地方の債券発行残高)はおよそ1000兆円です。国債発行残高がGDP比2倍もあるのは、先進国では日本だけです。
日本政府の借金は、債務の金額やその増加ペースが問題なのではなく、借金の対GDP比が年々増加していることが問題なのです。実は、世界中どこの国の政府も、多かれ少なかれ必ず借金があります。
左下のグラフは、先進6カ国の政府債務の増加率を表しています。2001年を起点とすると、実は日本の債務残高の伸び率は、他の先進国よりも少ないのです。グラフはOECDの公式データから作ったもので、嘘偽りではありません。
しかし政府の借金が増えていても、国の経済が成長を続けていれば、大きな問題は生じません。そこでポイントとなるのは「名目GDP」の成長です。名目GDPの成長率が、国債の利息よりも大きければ、国家全体としての借金負担率は増えないことになる(*注)ので、何も問題ないのです。同時に、GDPが増えることは経済のパイが拡大することなので、民間の国債消化余力が増えていくことも意味します。
ここに日本の大きな問題が潜んでいます。右側のグラフのように、先進国で唯一日本だけが、名目GDPが減少しているのです。借金は増えているのに、名目GDPが増えないのですから、債務の対GDP比は悪化の一途を辿ります。
一方で、例えばアメリカは、債務の増加率は日本よりも約1割大きいのですが、名目GDP成長率が日本より5割も大きいので、実質的な債務負担は日本よりもはるかにマシなのです。
日本のこの傾向は、一過性のものではありません。日本の1990年以降の名目GDP成長率は、年平均で1.0%であり、IMFのデータベースによると151カ国中の最下位とのことです(廣宮孝信著「国債を刷れ!」より)。もし諸外国のように、名目GDPが増えていく「健全な経済」ならば、現在の1000兆円という借金も、実は何の問題もないのです。
日本政府の破綻を防ぐためには、借金を減らすことではなく、名目GDPを拡大する必要があるのです。そもそも借金を減らすことは、政府が歳出削減をするか、借金を止めて税収を増やすしか無い訳です。しかしどちらも、100%確実に景気にマイナス影響を与えます。なので、名目GDPを拡大する政策を行う必要があるのです。
上記の五カ国(アメリカ・ドイツ・イギリス・フランス・イタリア)では、名目GDP成長率の平均は年3.1%です。そこから考えると、債務がより大きい日本の場合、名目GDP成長率は4%は必要でしょう。ポール・クルーグマンは日本に4%のインフレターゲットが必要だと言ってますし、高橋洋一氏も名目GDP4%成長で消費税を上げなくてよいと言っています。
但し日本では、世界最悪の少子高齢化による内需縮小があるので、実質GDPを拡大するのは極めて難しいです。ゆえに日本経済は、年率4%程度のインフレを起こすことで、実質GDPの不足分をインフレ率で補っていくことが、絶対不可欠なのです。だから当サイトでは、インフレターゲットを推奨しているのです。
*注 このことは「ドーマーの定理」といい、経済学の教科書にも載っている、極めて常識的な理論です。
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