株式投資ガイドブック from マネーガイドJP

日本郵政は史上最大の上場ゴール株になる!?

かねてより噂されていた通り、郵便局の親会社である日本郵政が、子会社のゆうちょ銀行とかんぽ生命とともに、2015年11月4日に株式上場することが決定しました。ネットでは日本郵政株のクチコミで溢れており、証券会社も売買手数料獲得のチャンスだと、営業に躍起になっています。

ですが投資家目線から見れば、斜陽産業である日本の郵便局グループへの投資が有効であるとは思えません。日本郵政は典型的な上場ゴール株になるリスクが高く、注意が必要でしょう。

「上場ゴール」とは、ある企業がIPOする際、上場初値がピークでその後値下がりの一方だ、というクソ株を揶揄する、ネットのクチコミから生まれた表現です。上場前は話題になって人気が出るものの、業績などの実体が全く伴わずに株価が下落の一途で、IPOに当選して初値で売り抜けられた投資家以外は大損だった、というパターンの事です。

2015年はこの上場ゴール株が続出した事で話題になりました。グミ(gumi=証券コード3903)、グノシー(gunosy=証券コード6047)、などが典型的な上場ゴール株でした。特にgumiは、上場直後に業績の下方修正や不祥事が発覚し、株価が暴落、上場詐欺だと投資家から怒りを買いました。そもそもこれらのIT企業は設備投資がほとんど不要な業種であり、上場して資金調達する必要性が感じられません。単に創業者一味や上場を後押ししたベンチャーキャピタルの金儲けの為だけに上場した、と言わざるをえない内容です。

しかし日本郵政も他人事ではなく、株価が上場ゴールになるリスクが指摘されています。ゆうちょ銀行やかんぽ生命は典型的な内需産業ゆえに、人口が減少していく日本社会を考えると、業績上昇の余地が感じられません。加入限度額の撤廃や融資業務の解禁など、噂される規制緩和が実施されればプラス材料ですが、銀行業界や保険業界が猛反発していますから、実現の可能性は未知数です。何より、日本郵政は赤字事業である郵便局(日本郵便)を抱えるハンデを背負っています。

このように、日本郵政は将来の成長余地が極めて厳しい情勢であり、長期的に株価が上昇していくとは予想しづらい状況です。

加えて、日本郵政の現在の株主である日本政府も、とりあえず高値で国民に売りつけられれば良いだろうという動機は十分です。ご存知のように日本の財政は逼迫しており、アベノミクスが失敗すれば財政破綻の懸念すら出て来ます。政府が国有財産である日本郵政株を売却して、何とか国の財政を潤そうと考えている魂胆が透けて見えます。gumiやグノシーなどのIT企業と同様、日本郵政もまた、上場で資金調達する明確な必要性は無く、政府の金儲けに過ぎないと言えるでしょう。

上場後の企業業績など知った事ではなく、とりあえず自分達が高値で売り抜けて利益を大きくできればよい、という思考です。上場ゴール株の背後にいるベンチャーキャピタルと、全く同じ思考回路ですね。

バブル期のNTTを越え、オウンゴールになる?

ちなみに上場ゴールといえば、日本郵政と同じく国営⇒民営⇒株式上場に至った企業として、NTTの事例が思い出されます。NTTはバブル崩壊の象徴として語られる事が多いですが、日経平均株価がピーク直前の1987年にIPOしたので、上場後に売買した人でも利益が出せた期間もあります。

具体的には、IPO初日はストップ高(約定しない)でしたが、翌日の2/10に160万円の初値が付き、4/22の高値時には、ほぼ二倍の318万円まで上昇、10月にも300万円台を付けた場面もありました。ですから、長期的にはどんどん値下がりしていったのは事実ですが、厳密にはNTTは上場ゴール株とはいえず、高値更新の期間もあったのです。

一方で今回の日本郵政グループは、NTT以上の巨大IPOになり、需給悪化により株価の下落懸念が指摘されています。また中国やギリシャの破綻、アメリカの利上げ懸念など、世界経済に悪影響を及ぼす材料が燻っており、マーケット全体がリスクが高くなっている現状があります。

従って、日本郵政株は本当にIPO時の株価がピークで、値下がりする一方になる危険性が高まっているのです。あのNTTを越え、日本の歴史上最大の上場ゴール株になるリスクすらあります。ネットのクチコミや証券会社のセールスに踊らされて投資すれば「オウンゴール」になりかねないので、十分に注意すべきです。


  マネーガイドJP (C)2014.rh-guide . All rights reserved.