HOME > 住宅・不動産 > 東京のタワーマンションバブルが止まらない理由
近年、東京都心でタワーマンションの人気が高まっています。特に湾岸のタワーマンション(東京の豊洲周辺、横浜のみなとみらい、など)は最上階でもないのに1戸1億円を越える「億ション」も珍しくなく、完全にバブルと言える状況です。
アベノミクス効果で日本経済も多少は上向いてきていますが、一般庶民が景気回復を実感できない中で、何故東京や横浜のタワーマンションだけバブルが止まらないのでしょうか?その理由は、需要と供給の両方の面で価格高騰を招いている為に、簡単にバブルが崩壊しないからです。
需要面の理由1〜投資目的
タワーマンションを購入する人の中には、自分が住む訳ではなく、投資目的として購入する不動産投資家が大勢います。庶民の懐事情が厳しいままですが、一部の富裕層はアベノミクスの恩恵で金回りが良くなっており、不動産投資を行う人が増え出しています。
しかも日本全体としては景気回復が不十分な為、ゼロ金利政策が取られており、住宅ローンも金利低下が続いています。銀行から金を借りて不動産投資を行いやすい状態にある事も、バブルに拍車をかけています。
更に近年は日本人のみならず、中国・香港やシンガポールなど海外の富裕層も、バブルに乗って日本の不動産への投資が激増しています。
需要面の理由2〜不動産事業による節税目的
上記のように不動産投資を行う富裕層が増えていますが、彼らは単に収入を増やす目的だけではなく、実は節税が目的だという人も多いのです。不動産投資はうまく行えば、損益通算によって給与所得を減らし、所得税や住民税が減額出来るのです。
具体的には、不動産事業のキャッシュフローが黒字でも、減価償却費などを含めた帳簿上の損益がマイナスになっていれば、節税出来ることがポイントです。つまり、大家業で収入は増えているのに、税金は減るという、とてつもなく美味しい状態を作り出すことも可能なのです。
需要面の理由3〜相続税の節税目的
そして、タワーマンションの需要が増えたもう一つの理由が、富裕層の相続税対策です。相続税の計算では、土地や建物は時価よりも低い評価になるのが一般的であり、資産価値を失う事なく節税出来る点が特徴です。
特にマンションは、土地の敷地全体の面積を住戸数で分割して計算する事になっています。タワーマンションが高層(住戸が多い)である程、一戸当たりの土地評価額は小さく計算されます。しかもマンションの価格は高層階の方が高いですが、相続税の土地評価額は専有面積によって決まる(階層による差が発生しない)ため、高層階の部屋であるほど節税効果も大きくなるという仕組みです。
また、東京のタワーマンションは中古市場での流動性が高い(売買が活発)ので、いざという時に売買が成立しやすいというメリットもいわれます。
一方、タワーマンションバブルが止まらない供給面での理由としては、2020年に東京オリンピックの開催が決定した事が挙げられます。
供給面の理由〜建設業界の人手不足
2011年に起こった東日本大震災の復興で忙しい最中、更に東京オリンピックに向けたインフラ整備が必要となった事で、建設業界の人手不足は深刻な状況に陥っています。その事が人件費の高騰⇒建築コストの上昇を招き、物件価格も上昇しているのです。
1980年代後半のバブル期、日本では不動産価格の上昇は永久に止まらないという「不動産神話」が作られました。しかし、当時のバブルは消費者側の需要が大きいだけで、建設業者側の供給はさほど不足していませんでした。ゆえに、需要と供給の両方で価格高騰の原因がある現在のタワマンバブルは、80年代の不動産バブル以上だと言えるでしょう。
しかし、タワーマンションを節税目的に購入する人が増加してきた事で、国税庁が節税を否認するという事案も増えてきています。タワーマンション節税のメリットは、法改正(相続税計算の変更)でいずれ消滅するはずです。そうなれば、節税目的の投資家が一斉に手を引くので、需要面からのバブルは崩壊します。
それに2020年が過ぎれば、建設業界の人手不足も終わるので、供給面からのバブル要因も消えていきます。
よって東京周辺のタワーマンションの価格は、東京オリンピックをターニングポイントに需給面が共に一気に転換するので、暴落する可能性が極めて高いのです。投機目的でタワマン購入すると、バブル崩壊で巨額の損失を出しかねないので、一般人が手を出すのはご法度ですよ。