HOME > カジノ法案 > 大阪のカジノは夢洲か泉佐野か?
大阪府は、日本でカジノ誘致に最も積極的な自治体です。橋下徹氏が府知事に就任した当初より、カジノによる景気対策を訴えていました。橋下氏が政界引退した後も、松井府知事と大阪維新の会は、カジノ誘致を重要な政策課題として挙げています。
大阪府の場合、カジノ・リゾート地というだけでなく、展示会や大規模会議を誘致するMICE機能を備えた場所として新設する必要性が高いです。大阪は日本で二番目のGDP規模、900万人近くの人が住む巨大都市です。関西(近畿2府4県)で見れば、人口2270万人・GDP約80兆円となり、共にオランダや台湾など「1国丸ごと」と同程度の規模です。ゆえに、巨大展示会・国際会議などのイベントを行うだけの価値がある訳です。
ところが、施設に大きな問題があります。大阪府には、南港に「インテックス大阪」、中之島に「大阪府立国際会議場」がありますが、いずれも世界的にみれば手狭な施設です。また都心に近いわりには交通の便が悪く、利用者からも圧倒的に不評です。よってカジノなどに併設して、巨大な展示場・会議場を建設し、シンガポールのようなMICE機能を備えたIRを作ることが、関西経済の浮揚には不可欠です。大阪維新の会がカジノ誘致に熱心な理由も、MICEによる経済効果を見込めるからです。
大阪府下でカジノ建設の候補地は二カ所あります。本命はメディアでもよく語られる、大阪市此花区・大阪湾に面した南港地域にある「夢洲」です。かつて大阪がオリンピックに立候補した際にも競技場の建設候補地だった場所であり、また2025年の万博誘致でも開催場所の有力候補として挙げられる場所です。
このような経緯からも想像がつくと思いますが、夢洲は広大な面積を誇りますが、大部分が空き地・遊休地です。夢洲の埋め立て事業は、大阪府で最も失敗した公共事業だと揶揄されています。この地にIRリゾートを作れば、地代も安い上に大失敗した公共事業の穴埋めにもなるので、一石二鳥だという訳です。
但し夢洲にカジノ・IRリゾートを建設するには、一つ大きな問題もあります。公共交通機関が無く、しかも自転車や徒歩での往来が不可能な事です。夢洲が廃れている最大の理由は、電車などの公共交通機関が無く、施設を作っても自家用車がある人以外は行けないことです。
※厳密には路線バスがありますが、現状では本数が少なく、実用的な交通手段では無い。
よって「JRゆめ咲線」や「地下鉄中央線」の延伸、もしくは梅田方面から北港通り辺りを通る新たな鉄道(地下鉄)を敷設する案などが挙げられています。夢洲までの距離等を考えると、地下鉄中央線の延伸が最有力候補です。
実は中央線のコスモスクエア駅から夢洲へは、トンネルの基礎工事が既にできており、今後の整備費用は約540億円と見積もっています(大阪府試算)。そして2017年6月に大阪府は、仮に万博誘致やIR計画が頓挫しても、夢洲への鉄道アクセス網を建設することを発表しました。
一方でもう一つのカジノ候補地が、泉佐野市にある「りんくうタウン周辺」です。りんくうタウンは関西空港への連絡橋のふもとにある地域です。折からのインバウンドの激増で関西空港の利用者数も増え、破綻の危機にあった泉佐野市の財政も健全化しました。
夢洲と違い、りんくうタウンには既にJRと私鉄(南海電車)の二路線が乗り入れており、高速道路の出入り口もすぐ側にあります。関西空港から電車でもタクシーでも約5分という、外国人観光客をカジノに呼び込むには抜群の立地です。既に十分なインフラ設備が整っており、大阪府や地元・泉佐野市が新たに巨額の投資をする必要が無いことが、りんくうタウンにカジノを作る最大のメリットです。
但し、周辺施設の立ち退きが必要な点がデメリットです。関空が出来て暫くは、周辺は遊休地だったのですが、近年ではショッピングモールなどの施設も建設されており、IRリゾートを作るには再び土地を空けてもらう必要があるので、完全にゼロコストで済むという訳にはいきません。ここが、大半が遊休地で幾らでも自由に建設できる夢洲と比較して劣る部分です。
また、最重要人物である大阪府の松井知事が「大阪のIR候補地は夢洲。泉佐野市には協力しない」と公言している点も大きなマイナス材料です。前述のように、大阪府は既に夢洲への鉄道敷設計画を表明しており、候補地争いはほぼ決定的とも受け取れます。行政の長である松井氏としては、最大の負の遺産である夢洲の活用に躍起になるのは当然でしょう。
夢洲になるか、りんくうタウンになるのかはまだ分かりませんが、大阪は関西地域のIR特区の「大本命」だと言われています。唯一の懸念材料が、和歌山に誘致を目論む自民党・二階幹事長の陰謀です。しかし、ど田舎での失敗ハコモノとして終わる可能性大の和歌山と、関西経済の牽引役としての大阪では、どちらがカジノ立地にふさわしいのか、言うまでもない事です。
大阪の財界は魑魅魍魎で、カジノ誘致に関しても政治サイドほど一枚岩ではない事も問題です。二階氏の陰謀を砕き、大阪にIR特区を作る事が、関西全体・日本全体の国益に繋がるので、ぜひとも財界も政治サイドと協力して、誘致に注力して欲しいものです。